日本人における卵摂取と血清総コレステロール,冠状動脈性心疾患との関係について【文献紹介】

食品・栄養情報
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みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。

卵摂取と健康との関連について多くの研究がなされており,大規模な研究もたくさん見られます(たとえば , PMID:3087475629785957など)。

しかしこれらは日本人以外を対象とした研究です。今回は2006年に発表された,日本人を対象に卵摂取と血清総コレステロール,冠状動脈性心疾患について検討された報告(JPHC Studyの一部)を見てみたいと思います。

研究の概要

要約

  • 卵の消費量が多いグループでは,「総コレステロール値が高い(220 mg/dl)」の頻度が低かった
  • 総コレステロールが高いことは,CHD(冠状動脈性心疾患)のリスクと関連していた
  • 卵の消費量とCHDのリスクは関連していなかった

方法

今回の解析対象となったのは,日本の多目的コホート研究:JPHC Studyの参加者です。研究の対象となったものの,アンケートへの有効な回答が得られなかったり,がんなどの持病を申告したもの等を除外し,最終的に90,735人が解析対象となりました。

卵の消費量は,研究開始時のアンケートによって尋ねられ,「週に1日未満」,「週に1~2日」,「週に3~4日」,「ほぼ毎日」の4つのカテゴリで解析が行われました。なおこの自己申告による卵の摂取量と実際の卵摂取量(食事記録により測定)は良い相関が見られたことも報告しています。その他アンケートでは「コレステロールの多い食事を避けていますか?」等の質問もなされました。

また血清総コレステロール値のデータも収集されました。ただし全員ではなく,健康診断プログラムに参加し血清総コレステロール値のデータが利用できる被験者に限られました。

結果

卵の摂取量別に,高コレステロール血症の割合や,食事から摂取するコレステロールを抑えるように意識している人の割合,CHDのHRについて下記に示しました:

卵の摂取量別の対象者特性およびCHDの調整HR
週に1日未満週に1~2日週に3~4日ほぼ毎日
高コレステロール血症
(220mg/dl以上)の割合 %
33.529.727.527.5
食事性コレステロール
摂取を抑える意思の割合 %
76.67069.769.3
CHDの調整HR(95% CI)1.19
(0.86-1.64)
1.00
(0.77-1.30)
1.00
(0.79-1.26)
1
(ref)
Table2,3より作成
注)HRは年齢やBMI,高血圧症や糖尿病等の影響を調整

次に血清総コレステロール(mg/dl)別に,CHDのHRについて下記に示しました:

血清総コレステロール(mg/dl) 別 CHDの調整HR
< 180180-199200-219220-239≧2400
CHDの調整HR
(95% CI)
1
(ref)
0.94
(0.52-1.68)
1.85
(1.11-3.10)
1.68
(0.95-3.00)
2.17
(1.22-3.85)
Table4より作成
注)HRは年齢やBMI,高血圧症や糖尿病等の影響を調整

まとめ・雑感

日本人を対象に,卵の摂取量と血清コレステロール,CHDとの関係について調べられた研究は多くありません。本研究はそのうちの貴重な一つです。

卵にはコレステロールが多く含まれているため,卵の摂取量が多くなると血中コレステロールが増加→CHDの発生が増加することが推測できます。食事性コレステロールが血中コレステロールに“まったく”影響を与えないとする言説も見られますが,それは誤りです(PMID:26109578参照)。

しかしながら本研究では,卵の摂取量が多い人でもCHDのリスクは高くなっていませんでした。それどころかむしろ,卵の摂取量の少ない人でCHDのリスクが高い傾向すら見られました(あくまで傾向)。この結果はどう解釈すべきでしょうか。

まず本研究では,因果の逆転が起こっている可能性があります。これは卵のような健康に悪いことが一般に周知されている食品で起こりやすくなります。

仮に,卵の摂取がCHDのリスクを上昇させるとしましょう(「仮に」ですよ!)。この場合,次のような因果関係が成り立ちます。すなわち,卵の摂取が増える→CHDのリスクが上昇するといった因果関係です。しかし,卵のようにCHDのリスクになることが(真であれ偽であれ)周知されている食品の場合はその逆も起こりえます。つまり,CHDのリスクが上昇した(例:健診等でコレステロール高いと言われた)→卵の摂取を減らすといった因果関係です。卵が心血管疾患のリスクとなるのであれば,それをできるだけ控えようとする考えによるものです。

これを裏付けるように本研究では,卵の摂取量が少ない人のほうが高コレステロール血症(220mg/dl以上)の割合が高いにも関わらず,コレステロールの多い食事を控えるようにしている人が多くなっていました。

食事の影響というのは,蓄積されてやってきます。今日コレステロールの多い食品(たとえば卵)を摂取したからといって,それが次の日のCHDのリスクを上昇させる可能性は限りなく低いと言えます。本研究では,卵の摂取量について尋ねたのは調査開始時のみです。そのため,調査開始よりも前の食事や調査開始後の食事については検討できていません。こういった因果の逆転により,卵の摂取量が(調査開始時に)多いにも関わらずCHDのリスクが高くなかった,もしくは卵の摂取量が(調査開始時に)少ないにも関わらずCHDのリスクが低くなかった可能性が考えられます。

なお,本研究では血中総コレステロールが高い人でCHDのリスクも高くなっていました。つまりもし,卵の摂取量が総コレステロールを増加させるとすれば卵の摂取量の増加がCHDのリスクを増加させることにも繋がります。したがって本研究の結果からは,「卵を摂取してもCHDのリスクを上昇させない」とする解釈はできないと考えて良いかと思います。

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