色々な食材をバランス良く食べる「食事の多様性」が健康に影響している可能性があります。
今回は,地域在住の日本人高齢者における食事の多様性と各種疾患による死亡率との関係についての研究について紹介します。
研究の概要
要約
- NILS-LSAに参加した60~79歳の男性386人,女性413人が対象
- 食事の多様性得点が高かった人(上位1/3)では,低かった人(下位1/3)と比べて全原因死亡率およびがん死亡率が有意に低かった
- 日本の地域在住高齢者では多様な食品を摂取することが死亡率を下げる可能性が示唆された
対象者
こちらの研究では,ベースライン調査時に60~79歳であった男性386人,女性413人を解析対象にしています。ベースライン調査は2010年に行われ,2012年まで2年ごとの追跡調査がなされています。この期間中に発生したイベントが記録されています。
食事評価・多様性スコアについて
食事の評価は,連続した3日間(平日2日,週末の休日1日)の食事記録法(写真による補助付き)により実施されました。ベースライン調査時に1度だけ実施されています。
食事の多様性は,Quantitative Index for Dietary Diversity (QUANTIDD)によって評価されています。食品標準成分表では18の食品群が示されていますが,そのうち砂糖及び甘味類,油脂類,菓子類,し好飲料類,調味料及び香辛料類,調理加工食品類を除外し,野菜類を淡色野菜と緑黄色野菜に細分した13の食品群が対象となっています。
これらの食品群からどれだけ均等にエネルギーや栄養素を摂取しているか?によって摂取した食品の多様性がスコア化されます。
結果
以下のようになっていました:
- 食事多様性スコアの高い人では穀類の摂取量が少なく,それ以外の食品群の摂取量が多い傾向にあった
- 加えて,食事多様性スコアの高い人ほど,多くの栄養素(エネルギーやナトリウムも含む)で多い傾向にあった
- 食事多様性スコアの高い人では,低い人と比べて全原因死亡およびがん死亡のHRが有意に低かった
- ただし,冠状動脈性心疾患・脳血管疾患とは関係していなかった
死亡率との関係について表に示すと下記のようになります:

まとめ・雑感
今回の研究では,食事の多様性と死亡との関係を調べています。結果,食事の多様性が高い人では全原因・がん死亡のHRが低くなることが示されました。
この結果は,
- 食事が多様になることにより多くの栄養素を摂取できたこと
- 食事を多様にするために料理や買い物など健康的な活動を実践できたこと
が関係してると考察されています。
高齢者では,エネルギー・たんぱく質摂取量の低下に伴う低栄養が健康上の大きなリスクとなります。本研究では,多様性得点の高い人ほどエネルギーやたんぱく質の摂取量も多めでした。そのため,エネルギー・たんぱく質を含む栄養素摂取量を増加させる可能性のある食事の多様性が健康を改善する方向に働いたものと考えられます。
この考えでいくと,この結果を日本人の高齢者でない成人に適応するのは微妙かもしれません(もちろん,高齢者でない成人に,食事を多様にすることを推奨しないという意味ではありません)。