「機能性表示食品」の科学的根拠となるシステマティックレビューの質について

食品・栄養素
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みなさん,こんにちは.
シンノユウキ(shinno1993)です.

2015年より,「機能性表示食品」と呼ばれるタイプの食品が新しく登場しました。これは,以前より存在していた「特定保健用食品」とは明確に異なるもので,特定保健用食品で必要となる国による審査が不要なのが特徴です。機能性を表示するだけの根拠とともに届け出を行えば,それを企業側の責任として,機能性を表示した食品を販売することができます。

「機能性を表示するだけの根拠」というのは,具体的に次の2つがあります:

1.最終製品を用いた臨床試験
2.最終製品又は機能性関与成分に関する研究レビュー

引用)「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン 」平成29年12月27日 改正

臨床試験を行うことは,特に中小企業の場合は難しいことです。多くのコストを支払う必要があるため,現実的でない場合があります。その場合,2つ目の方法である研究レビューでもって届け出の根拠とできるのは,届け出のハードルを下げることに繋がります。

この2つの方法は,それぞれ「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」において,詳細に方法や守るべき基準等が示されています。研究レビューについては 「PRISMA声明 に準拠した論文もしくは資料を提出すること」もそれに含まれます。

「PRISMA声明」という言葉に聞き馴染みがない方も多いかもしれません。これは, 研究レビューの一種であるシステマティックレビューおよびメタアナリシスの報告の質を向上させることを目的として公表された声明です。上記研究レビューにおいて報告すべき事項を示しており,27のチェックリストと,4段階のフローチャートで構成されています。その中には,「タイトルでシステマティックレビューかメタアナリシスである旨を明示する」といったものもあれば,「データの収集プロセスを示す」・「研究のバイアスやリスクについて評価する」などもあります。

消費者庁は,機能性表示食品の根拠として届け出られたシステマティックレビューの「質」について調査を行っています (R) 。調査対象としたシステマティックレビューは,2015年4月から10月31日までに公表された食品で,システマティックレビューを根拠とした届け出のうち,重複を除いた51編です。この調査では,先に紹介した「PRISMA声明」に準拠しているかどうかが,について主に評価されました。この調査の結果を受け,消費者庁は「「機能性表示食品」制度における機能性に関する科学的根拠の検証-届け出られた研究レビューの質に関する検証事業報告書 」を公表しました。

この報告書は,食品企業等でのシステマティックレビュー届け出に際しての指針となるものです。この報告書が公表された以上は,「その後に届け出られるシステマティックレビューの質は向上したのでは?」と考えるのが普通です。それについて調査したのが,今回紹介する論文です:

研究をざっくりとまとめると以下のようになります:

  • システマティックレビューの質のスコアリングは「AMSTARチェックリスト」により行われた
  • 検証レポート公表後,システマティックレビューの質は,公表前に比べて低下していた
  • 食品企業等は,システマティックレビューの質評価を行う必要がある
  • アカデミアは,食品企業等が適切なシステマティックレビューを行えるようなサポートを提供する必要がある

本研究では2017年7月1日から2018年1月31日までの間の公表されていた機能性表示食品を対象としました。その中から,システマティックレビューを届け出の根拠とした食品を抽出し,重複を削除した104編が評価の対象となりました。評価は「AMSTARチェックリスト」によって行われました。以前の研究では2015年4月から10月31日までに公表されていた食品を対象に評価を行いました(R)。以前の研究で評価されたスコアと,今回の研究で評価したスコアを比較し,どのように変化があったのかを調査しています。

結果,以前の研究と比べてスコアは低くなっていました。以前のスコアが6.2±1.8であったのに対して,今回の研究では5.0±1.9でした。これは統計的にも有意でした

なぜこのような結果になったのでしょうか。これには,いくつかの理由が考えられますが,最も大きな理由は,調査レポートの活用が徹底されていなかった可能性があることです。以前の研究結果を元にした調査レポートは,その旨の通知を出したのみです。消費者庁はそれによるチェックを行わないため,それが徹底されなかった可能性があります。

繰り返しになりますが,機能性表示食品が従来の特定保健用食品と異なるのは,「企業側の責任で機能性表示ができる」というところです。加えて,「研究レビューも届け出の根拠とできる」というところも特徴的です。

これらは,コストの問題で臨床試験を行えない中小企業にとっては望ましいもので,その結果として多くの魅力的な商品が消費者に届けられる可能性が高まりますので,消費者の利益にも繋がります。ただし,その利益を適切に傍受するためには,消費者はそれら商品に表示された機能性の根拠を適切に見極めることが必要になります。それらの情報を適切に見極めるためには,適切な方法で行われた研究レビューが必要不可欠です。

現在のところ,消費者庁は機能性表示食品の審査を行う予定はありません。となれば,届け出を行う企業側が適切な方法で研究レビューを行ったり,そのためのサポートをアカデミアが行う必要があります。今回の研究では,この点がより強調される結果となりました。

注意
  • 今回の研究では,機能性表示食品の届け出根拠となったシステマティックレビューの質についてのみ評価しています。そのシステマティックレビューを科学的根拠とした機能性表示食品の質や安全性については評価していません

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