【管理栄養士が検証】 アリナミンの臨床試験データは信用できるか?

みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。

栄養ドリンクとして有名なアリナミンは,アリナミンEXゴールドという製品で,その製品が効く根拠として,「臨床試験データ」をWebで公開しています。

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アリナミンの公式サイトです。製品情報やアリナミン が疲れに効く理由、よくある質問などをご紹介します。抗疲労成分「フルスルチアミン」を全シリーズに配合、疲労の回復・予防/カラダの内側から疲れに効く アリナミン

今回はそのデータがどの程度信用に足るものなのか,見てみたいと思います。

ではいきましょう!

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アリナミンとは

まず,アリナミンについて整理しておきましょう。アリナミンは錠剤やドリンクといった形式で販売されている商品の商品名です。疲れた時に飲用する栄養ドリンクとして親しまれています。

効くといわれる理論

アリナミンは,疲れなどに効果があるとされています。これはアリナミンに含まれる,ビタミンB1の誘導体,「フルスルチアミン」が関係しています。フルスルチアミンは,通常のビタミンB1と比べて体内に吸収されやすいという特徴を持っています。

下の図は,アリナミンのHPから転載したものです:

引用)
https://alinamin.jp/alinamin/fursultiamine/index.html

理論的にはビタミンB1(フルスルチアミン)が糖質からのエネルギー産生を手助けすることで,糖質が効率的にエネルギーとして使われるようになるため,疲れに効く,ということになります。

しかし,これはあくまでも理論。実際に疲労に効くかどうかはわかりません。効果があるかもしれませんし,ないかもしれない。もしかしたら,日本人が普段摂取しているだけのビタミンB1だけで足りるかもしれません。それらを確認するために,アリナミンEXゴールドについては,臨床試験を行い,そのデータをWebで公開しています。

 臨床試験データに関するCM

また,アリナミンは臨床試験データを用いて,あたかもアリナミンは効果的であるかのようなCMを放送しています(現在は放送されていません)。

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有名人を起用したCMで,「臨床試験」という極めて信頼性の高そうな言葉を用いることで,一般の方はアリナミンには効果があるのでは?と考えてしまうかもしれません。

ではその臨床試験データを検証してみよう,というのが今回の記事の主旨です。

臨床試験データについて

データを信用し切ることはできない

臨床試験データに関する情報が載っているWebサイトでは,以下のようなグラフが載っていました。

引用)
https://alinamin.jp/alinamin-exgold/data.html

今回,このグラフの出典を検索してみたのですが,どうにも見つかりません。ですので,詳しい研究のデザインや測定方法などはわかりませんが,このグラフの情報をもとに判断してみようと思います。

文章中には,目,肩・首すじ,腰などに症状がある方に,アリナミンEXゴールドを4週間服用してもらうことで,眼精疲労が66.0%,肩こりが62.0%,方・首すじの自発痛が72.5%,腰・背部の自発痛が55.6%改善したと記されていました。

おそらく,多くの方がそれらの症状に悩んでいることだと思いますので,それらが少しでも改善され,効果があるのであれば試してみたい!と思うのが当然だと思います。しかし,この臨床試験データには,考慮しなければならない点があります。

今回,上記のようなデータ(製品に対するポジティブな効果)が得られたのは,もしかしたら以下の2つの理由によるかもしれないのです:

  • プラセボ効果の可能性がある
  • 平均へ回帰したかもしれない

これについて,以下で詳しく紹介していきましょう。

理由①プラセボ効果

プラセボ効果については多くの方がご存知かもしれません。いわゆる偽薬効果というものです。実際には効果がない薬を服用しても,思い込みによる影響で効果が現れることがあります。この思い込みの効力はすごいもので,効果があると思いこんで服用することで,実際に効果が現れたりするのです。

しかし,それは本来の薬の効果とは違うものです。プラセボ効果でも効果があれば良いのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが,実際にその薬(今回はアリナミン)に効果がないということを認識してしまうと,その時点でプラセボ効果は消失してしまいます。加えて,プラセボ効果でしか効果を発揮しないような製品を許容することは,偽薬を流通させることを肯定することにもつながり,そういった観点からも許されるものではありません。

一般的な研究デザインだと,プラセボ効果の影響を考慮するために,アリナミンを服用させるグループとプラセボ薬(偽薬)を服用させるグループの2つに分けて検証します。しかし,このグラフからだけでは,それが行われたかどうかはわかりません。

したがって,この臨床試験データで示された効果は,プラセボ効果である可能性を捨てることができないということになります。

理由②平均への回帰

2つ目の理由として,平均へ回帰した可能性が考えられます。
「平均への回帰」については,詳しくは以下の記事をご覧ください:

この臨床試験では,目,肩・首すじ,腰などの症状がある方を対象とし,その後の症状の改善具合などを観察しています。

調査の時点で症状があるという方には2種類いて,ずっと症状があった方と,この時だけ症状があった方です。このうち,この時だけ症状があった方は,なんにもしなくても,つまりアリナミンを服用しなくても時間が経てば症状は改善してしまいます。

ですので,その時点で症状がある方だけを抽出し,経過をたどれば,全体の症状としては必ず平均に回帰,つまり良くなります。これを平均の回帰と言います。

したがって,この臨床試験データで示された効果は,平均への回帰の影響である可能性を捨てることができないということになります。

結論

今回は,アリナミンの臨床試験データを確認し,その効果を検証しました。詳しい出典元をたどることができなかったため,アリナミンの効果について断定的な意見を書くことはできません。しかし,Webのデータだけを見る限りでは,それのみを根拠として「効く」ということはできないと思います。臨床試験データのみをアリナミンの購入理由とする方(おそらく多くはないでしょうが)に,この記事が参考になればと思っています。

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