食品成分表にエネルギー値に関する摂取量の計算に必要な成分項目を追加する方法

みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。

『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』(以下,成分表2020)ではエネルギー値の計算方法が変更されました。それに伴い,エネルギー産生栄養素をはじめとした栄養素項目について,実務でどれを使用すべきか迷われるケースが多いようです。

そんな中,成分表2020の策定に関与された渡邊智子先生が,女子栄養大学出版部の「Webマガ」での連載にて,上記疑問に答える内容の記事を執筆されました:

新しい方法で算出されたエネルギー値を使用する場合は,エネルギー産生栄養素(特に三大栄養素)の摂取量を算出するに際し,エネルギー計算に使用した値を使うのが望ましく,そのためには,それに用いるべく編集された成分表が必要との提案を示されています。

文科省から公表されている成分表2020は,エネルギー値の計算に使用した成分項目が1つにまとまって掲載されていません。つまり,公表された成分表をそのまま栄養価計算に使用する場合,エネルギー値の算出に関する成分項目(三大栄養素)の摂取量の算出に当たっては,複数の項目を参照する必要が生じ,計算ミスが発生してしまう可能性が高くなっています。そのため,事実上,成分表2020を栄養価計算に使用するためには,エネルギー値の計算に使用した成分項目を別途追加する編集作業が必要となります

そこで本記事では,上記の記事を参考に,Excelファイルで公表されている既存の成分表2020に,エネルギー値に関する摂取量の計算に必要な成分項目を追加する方法について紹介していきます。

本記事は現時点(2021年5月5日)で公表されている情報に基づいて(当然,非公式に)作成したものです。情報の更新に伴い,修正する場合があります。また,内容には万全を期していますが,不備や過ち等があれば,ご指摘いただければ幸いです。

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たんぱく質

たんぱく質に由来するエネルギー値については,「アミノ酸組成によるたんぱく質」が測定・掲載されている場合はそれを使用し,されていない場合は「たんぱく質」を使用して計算されます。

摂取量の把握に際しても,それらエネルギー値の計算に使用された項目の重量を採用すればよさそうです。

「アミノ酸組成によるたんぱく質」が測定されているかどうかは,「アミノ酸組成によるたんぱく質」の値が「‐」であるかどうかで判断するのが良さそうです(「-」なら未測定です)。つまり下記のようになります:

  • 「アミノ酸組成によるたんぱく質」の値が「‐」
    →「たんぱく質」を使用
  • 上記以外
    →「アミノ酸組成によるたんぱく質」を使用

これをExcel上で実現しようとすると,下記のようになると思われます:

❷「アミノ酸組成によるたんぱく質*」の項目名は一例です

脂質

脂質に由来するエネルギー値については,「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量」が測定・掲載されている場合はそれを使用し,されていない場合は「脂質」を使用して計算されます。

たんぱく質と同様,摂取量の把握に際しても,それらエネルギー値の計算に使用された項目の重量を採用すればよさそうです。

「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量」が測定されているかどうかは,「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量」の値が「‐」であるかどうかで判断するのが良さそうです。つまり下記のようになります:

  • 「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量」の値が「‐」
    →「脂質」を使用
  • 上記以外
    →「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量」を使用

これをExcel上で実現しようとすると,下記のようになると思われます:

❷「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量*」の項目名は一例です
上記「たんぱく質」の作業を行った後のため,列が1列ずれています

利用可能炭水化物

上記まででたんぱく質と脂質について見てきました。これらは比較的シンプルでしたが,利用可能炭水化物はやや複雑です。

利用可能炭水化物に由来するエネルギー値については,「利用可能炭水化物(単糖当量)」もしくは「差引き法による利用可能炭水化物」から算出されています。このどちらを使用したかは,成分表2020を参照すれば分かります。成分値の右側にアスタリスクが付されている項目をエネルギー値の計算に使用しています。

ところで,利用可能炭水化物の摂取重量を計算する場合,「利用可能炭水化物(単糖当量)」を採用するのは不適切です。項目名から理解できるように,これは利用可能炭水化物の質量を単純に合計した値ではなく,単糖の質量に換算してから合計した値です。ですので,利用可能炭水化物の摂取重量を計算する場合には,「利用可能炭水化物(質量計」を採用するのが適切です。

もちろん,エネルギー値の計算に「差引き法による利用可能炭水化物」を使用している場合は,利用可能炭水化物の摂取重量の計算にも「差引き法による利用可能炭水化物」を使用するのが望ましいでしょう。

上記を踏まえると,下記のようになります:

  • エネルギー値の計算に「利用可能炭水化物(単糖当量)」を使用
    →「利用可能炭水化物(質量計」を使用
  • 上記以外
    →「差引き法による利用可能炭水化物」を使用

これをExcel上で実現しようとすると,下記のようになると思われます:

❷「利用可能炭水化物(質量計)*」の項目名は一例です
上記「たんぱく質」,「脂質」の作業を行った後のため,列が2列ずれています

まとめ

今回は,食品成分表にエネルギー値に関する摂取量の計算に必要な成分項目を追加する方法について紹介しました。

成分表2020がExcelデータで提供されていることもあり,編集することはそれほど難しくはありません。

あとは,これらの値を “どのように使用するか” が重要になって来るところだと思います。

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