「第16回日本給食経営管理学会学術総会」のシンポジウムを視聴して

みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。

昨日は,「第16回日本給食経営管理学会学術総会」のシンポジウムのディスカッションを視聴しました。時間の関係上,最初の1つしか視聴できませんでしたが,大変貴重な機会となりました。

内容は,「栄養・食事管理の質を考える~日本食品標準成分表2020年度版(八訂)(8訂成分表)・食品データベースの活用~」です。八訂成分表の活用について,さまざまな立場から議論・意見交換がなされていました。

今回のディスカッション視聴は,八訂成分表について改めて考える機会となりました。「鉄は熱いうちに打て」という言葉もありますので,この機に少し,八訂成分表の活用方法について私の意見を書いてみたいと思います。
“私が感じたこと・考えたこと”となりますので,ディスカッションと直接関係ないことも含まれます(むしろそちらが主です)。いわゆるイベントレポートではありません。解釈も,私個人の見解とですので,ご留意ください。

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調理後食品の活用について

八訂成分表より,調理後食品を用いた栄養価計算の重要性が強調されているようです。

調理後食品自体は,以前の成分表から収載されてきました。しかし,主要な食品でも調理後が収載されていない食品があったことから,利用に尻込みする施設も多かったようです(現在でも多数派ではないでしょうか)。
実際,給食の食材管理(発注等)は「生」の状態で行われることがほとんどですので,このことも関係しているかもしれません。

解決策・対応法として,下記のようなことが望まれるかもしれません:

これまでも,たとえば上記のようなソフトウェアや成分表は存在していました。しかし,利便性に欠けている等の理由により,うまく活用されてこなかったと思われます。(「調理による成分変化を考慮した成分表」については,改めて紹介したいと思います)
加えて,実務者においても,調理後食品で計算する必要性を理解していないケースもありました。それらが相まって,十分に普及してこなかったと考えられます。

食材管理と栄養価計算を分けて考える場合,廃棄率や重量変化率の概念をより厳密に理解する必要がありそうです。調理後食品に生食品の廃棄率を併記することも必須となりそうです。

なお,調理後食品を栄養価計算に活用することは,後に記述する給与栄養目標量との兼ね合いにも関係してくる事項となります。

給与栄養目標量,DRIsでの評価について

給与栄養目標量は,多くの場合で,「日本人の食事摂取基準」(以下 DRIsとします)をもとに作成されているかと思います。

DRIsの基準値の決定にあたっては,

  • 食品成分表に依存しないもの(例:エネルギー)
  • 食品成分表に依存するもの(例:食物繊維)

があります。明確に区別できるものもあれば,そうでないものもあります。

食品成分表に依存しないものについては,食品成分表の更新に際し,食事内容を調整する必要が生じる場合があると思われます。
八訂成分表では,食品のエネルギー量が少なくなる傾向にあります。DRIsのエネルギー必要量は「二重標識水法」という方法をベースに決められており,食品成分表に依拠していません。そのため,給与栄養目標量をDRIsベースで決めてきた施設等では,給与エネルギー量を増やした献立を改めて作る必要があります。もちろん,体重変化等を基準に給与エネルギー量を決めてきた施設等では,献立を作り直す必要はありません。

一方,依存するものについては,DRIs策定時の成分表を使用して栄養計算するのが(厳密には)適切かもしれません。成分表更新時に,献立まで変更する必要性は薄い可能性があります。食物繊維については,下記の記事を参照してください。

また,これまで調理損失等に厳密でない栄養価計算を行ってきた場合,調理損失を考慮することで,栄養素量が少なくなる場合があります。そのため,これまでより多めの量を提供する必要が生じてくるかもしれません。

まとめ:改めて振り返って

今回視聴したディスカッションは,「日本給食経営管理学会」の学術総会でした。食材の管理に加え献立作成や栄養評価など,食品成分表を多様な場面で使用する方が多く参加する学会と思います。

八訂成分表が公表され,もうすぐ1年が経とうとしていますが,まだまだ過渡期であると感じました。そして,まだまだ多方面でのコンセンサスが得られていない事項が多く存在していることが確認できた機会でもありました。

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