「食品成分表 2020 年版(八訂)」 でエネルギー値はどう変わるのか?【ざっくり解説します】

栄養価計算の基礎知識
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みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。

2020年末に公表予定とされている「日本食品標準成分表 2020 年版(八訂)(仮称)」では,5年に1度の大改訂ということもあり,多くの変更が予定されています。その中でも特に大きな変更と考えられるのがエネルギー換算係数の変更です。これにより,栄養価計算等で特に重視されているエネルギー値が食品によっては大きく変動することとなります。

そこで今回は,現時点(2020/05/13)で公表されている下記2つの資料をもとに,エネルギー値がどのように変わるのか簡単にまとめてみたいと思います。

参考資料)
文部科学省:日本食品標準成分表のエネルギー値の算出方法を変更します
第 18 回食品成分委員会:組成に基づく成分値を基礎としたエネルギー値の算出について

下記で紹介していくのは,上記2つの資料に基づいたあくまでも仮(案)の段階のものです。情報が更新されるに伴い本記事も修正していく予定ですが,実際に公表の際には変更される可能性があることにご留意ください。

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エネルギー値はどのように変わるか?

まずは,エネルギー値がどのように変わるか,ざっくりと理解しましょう。端的に示すと,これまでの「修正Atwater係数」による算出から「組織成分ごとの換算係数」に変わります(下記参照)。

エネルギー値がどのように変わるのか?
  • 2015年版
    これまで

    たんぱく質・脂質・炭水化物から「修正Atwater係数」で算出(一部食品は個別に係数を設定,きのこ類・藻類等はAtwater係数により算出したエネルギー値の0.5倍値としてきた)

    例:たんぱく質 x 4 + 脂質 x 9 + 炭水化物 x 4 + (アルコール(g) x 7等)

  • 2020年版
    これから

    アミノ酸・脂肪酸・単糖類・多糖類から「組織成分ごとの換算係数」で算出

    例:アミノ酸組成によるたんぱく質 x 4 + 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 x 9 + 利用可能炭水化物(単糖当量) x 3.75 + 糖アルコール x 2.4 + 食物繊維総量 x 2 + 有機酸 x 3 + アルコール x 7

これにより,特にきのこ類や藻類等については,エネルギー値が大きく変化することが予想されます。これらの食品は,Atwater係数から算出されたエネルギー値に0.5倍を乗じた値を暫定的に採用してきました。しかし2020年版からは,食物繊維に個別の換算係数が用意されるためエネルギー値は増加する傾向となることが予想されます。

なぜエネルギー値の算出方法を変更する必要があるのか?

これまでの食品標準成分表では,修正Atwater法によってエネルギー値が算出されてきました。なぜそれを変更する必要があるのでしょうか。下記に主な理由を示します:

  • 消化性試験の適用の困難さ:これまでは,人での消化性試験等により食品個別のエネルギー換算係数を算出できたものについては,それを利用してきました。しかし試験を実施するに際して,個人差の存在やコスト面の課題もあり,すべての食品について試験を行うことも難しい状況でした。そのため,これら試験を実施できていない食品ではAtwater係数を基本的なエネルギー換算係数として採用するしかない状況でした。
  • きのこ類と藻類のエネルギー値:きのこ類や藻類等については難消化性有機物が多く,また人での消化性試験についても個人差が大きいことから,個別のエネルギー換算係数を算出するのが難しい状況でした。以前の成分表ではエネルギー値の収載がなかったほどです。現在はAtwater係数で算出された値に0.5を乗じた値を掲載していますが,これはあくまでも暫定的なものでした。
  • 炭水化物への一律のエネルギー換算係数の適用:差し引き法により算出された炭水化物には,糖質の他に食物繊維や微量の有機物が含まれます。これらの消化・吸収による利用のされ方(エネルギー産生量)は当然異なりますが,これまでは個別のエネルギー換算係数が求められていない食品については,炭水化物の総量として一律のエネルギー換算係数が乗じられてきました。

エネルギー値はどの程度変化するのか?

実際にエネルギー換算係数が変わった場合,これまでの成分表で算出してきた値とどの程度変化するのかは,把握しておきたいところです。下記に,平成26年度の国民健康・栄養調査の調査データを元に,平均的な食事で1900kcalを摂取した場合に,エネルギー値の変動の多い食品をまとめた表を掲載します:

転載) 第 18 回食品成分委員会:組成に基づく成分値を基礎としたエネルギー値の算出について

たとえば,今まで「1088 こめ [水稲めし] 精白米、うるち米 」を470.2kcal摂取していた人は,それが434.3kcalと再計算される形となります。その差は36.0kcalとなります。

まとめ

今回は,「日本食品標準成分表 2020 年版(八訂)(仮称)」で予定されているエネルギー換算係数の変更についてザックリと解説しました。献立作成等でも重視されているエネルギーについての変更ということもあり,少なからず影響がありそうです。

しかし,実際に摂取・利用されるエネルギー値に近づけるための変更のため,当然ながら歓迎すべきものです。実際に公表されるのが楽しみですね。

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