推定エネルギー必要量を算出するためのExcelシート

みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。

昨日,Twitterのタイムラインに以下のような記事が流れてきました:

VBA界隈では知らない人はいないであろう,有名な方が書いた記事です。VBAだけでなく,エネルギー出納にも詳しいという,栄養士泣かせな方です。上記の記事は,エネルギー摂取量と体重の遷移とをシミュレーションしてくれるものです。基礎代謝量の推定には「国立健康・栄養研究所の式(Ganpule の式)」が使われています。

上記の記事を受け,私も推定エネルギー必要量を算出するExcelを作りたいな,という動機で書いているのがこの記事です。体重の遷移をシミュレーションすることはしませんが,性別・年齢・体重・PAL(身体活動レベル)から推定エネルギー必要量を算出するExcelシートを紹介したいと思います。Excel関数で示したほうがわかりやすい方が多いかと思いますので,以下では基本的なExcelの機能のみで作成していきます。

ではいきましょう!

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推定エネルギー必要量の算出方法

エネルギーの必要量を算出する方法にはいくつも種類がありますが,今回は「日本人の食事摂取基準」でも使用されている,基礎代謝基準値と身体活動レベルを活用した方法を採用したいと思います。これを活用する場合,必要なエネルギー量は以下のように求めることができます:

推定エネルギー必要量 =
基礎代謝基準値(kcal/kg 体重/日)× 体重(kg)× 身体活動レベル

  • 基礎代謝基準値: 体重1kgあたりの基礎代謝量を示す値です。日本人を対象にした研究によって定められており,基準値に体重を乗じることで基礎代謝量が算出できます。年齢と性別によって,適した基礎代謝基準値を選択することができます。なお,この基準値は日本人での一般的な体格の人を参照して作られているため,それから乖離している人の場合は,適応に注意が必要です。
  • 体重:現在の体重を使用します。体重と基礎代謝基準値をかけ合わせることで基礎代謝量を推定できます。
  • 身体活動レベル:身体活動の量やレベルを反映した係数です。日本人を対象にした研究において,エネルギー消費量を推定基礎代謝量で割った値を採用しています。そのため,基礎代謝量に身体活動レベルを乗じることで推定エネルギー必要量を算出できます。主に3つの区分(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)に分けられ,活動量によって身体活動レベルが決められます。

上記における基礎代謝基準値や身体活動レベルは,「日本人の食事摂取基準(2020年版)(案)」に基準値が掲載されています。それを活用して,必要エネルギー量を算出していきたいと思います。

Excelで行う場合

以下では,実際にExcelで行う場合を示していきます。以下のようなシートで行っていきます。なお,こちらで使用するシートは,こちらからDLできます:

①基礎代謝基準値を検索する

まずは基礎代謝基準値を検索します。基礎代謝基準値は,「日本人の食事摂取基準(2020年版)(案)」にて以下のように公表されています:

出典)厚生労働省:「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書 (案)(2019)

これをExcelデータとし,「年齢区分」と「性別」から該当する基準値を引っ張ってきます。これには,Excel関数の「VLOOKUP」と「MATCH」を使用します。下記のようになります:

年齢や性別は名前定義しています。数式を少しわかりやすくするためにしているものですので,直接セルを参照しても問題ありません。なお,検索しているシート「基礎代謝基準値」は先に示したとおりです。A列が年齢区分に,B2:C13までに基準値が入力されています。

年齢をキーとして,表を検索しています。何列目を参照するか(男性か女性か)には,MATCH関数を使用しています。これで基礎代謝基準値が検索できます。

②身体活動レベルを検索する

次に,身体活動レベルを検索します。身体活動レベルの区分は3つですが,年齢によって基礎代謝量に乗じる係数は異なります(性別によって違いはない)。こちらも食事摂取基準に収載されており,以下のようになっています:

出典)厚生労働省:「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書 (案)(2019)

さっそく,身体活動レベルを検索していきましょう。「年齢区分」と,入力された「PAL区分」から該当する身体活動レベルの係数を検索します。これには,先ほどと同様に,Excel関数の「VLOOKUP」と「MATCH」を使用します。下記のようになります:

年齢やPAL区分は名前定義しています。身体活動レベルのシートは先にあげた表を活用しています。A列には年齢区分,B2:D13までに身体活動レベルの係数が入力されています。

年齢をキーとして,表を検索しています。何列目を参照するか(身体活動レベルがどの区分か)は,MATCH関数を使って検索しています。これで身体活動レベルの係数が検索できます。

なお,身体活動レベルの基準値が存在しない年齢区分・身体活動レベル区分があります。たとえば,75歳以上の身体活動レベルが「Ⅲ(高い)」の方。このような方は非常に少なたいめに参考にできるデータがなく,身体活動レベルの基準値が設定されていません。私が作成したExcelシートでは,この区分を選択するとエラーになりますが,実際に運用する際には留意が必要となります。

③推定エネルギー必要量を算出する

上の①と②で,基礎代謝基準値と身体活動レベルを検索できました。
ではいよいよ推定エネルギー必要量を算出していきましょう。

Excelシートでは以下のようになります:

非常に単純ですね。体重と基礎代謝基準値と身体活動レベルの係数(PAL係数)を乗じたものが推定エネルギー必要量です。基礎代謝基準値や身体活動レベルの検索を別のセルに分割したことで,この部分の計算式は単純になりました。

まとめ

今回はExcelで推定エネルギー必要量を算出するためのシートを作成しました。こちらのシートは,多くのデータを処理するようには設計していません。あくまでも,計算の過程等を見やすく表示することを主目的として作成しています。活用の際等はアレンジしてご利用ください。

なお,今回使用したシートは以下よりDLできますので,よろしければご活用ください:

推定エネルギー必要量の算出.xlsx
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