パフォーマンス向上のための抗酸化物質(ISSN公式見解に学ぶ)

みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。

日々トレーニングを行っていると,少しでも効果があるなら,また効果があるかないかが曖昧であったとしても,パフォーマンスを向上させる可能性があるものなら試してみたいと思うものです。

トレイルランナーの鏑木毅さんは,著書「究極の持久力」の中で「抗酸化」の重要性,特にアスタキサンチンのサプリメントを強く推奨されています。ただ,私が読んだ当時は個人の感想という側面が強く,私自身はそこまで真剣に捉えていませんでした。

しかしそれ以降,スポーツパフォーマンスにおける抗酸化物質のエビデンスも蓄積されてきており,2026年2月17日には,国際スポーツ栄養学会(ISSN)から,抗酸化物質がスポーツパフォーマンスに与える影響についてのポジションステートメントが発表されるまでに至りました。

本記事では,上記ポジションステートメントに基づき,科学的にパフォーマンス向上効果が認められた抗酸化物質と,その具体的な摂取方法を解説します。

運動による酸化ストレスの影響

激しい運動をして大量の酸素を取り込むと,体内で「活性酸素」が発生します。活性酸素と聞くと「体への悪者」というイメージが強いかもしれません。しかし,実は悪い面と良い面の両方を持っています。

適度な酸化ストレスは,体が運動に慣れて強くなる「生理学的適応(トレーニング効果)」を促進します。一方で,酸化ストレスが過剰になると,筋損傷や免疫機能の低下を招き,かえってパフォーマンスを落としてしまいます。

つまり,「過剰な酸化ストレスによるダメージを防ぎつつ,トレーニング効果を打ち消さない」という,適度なバランスを保つことが重要なのです。

ISSNのポジションステートメント

2026年2月17日,国際スポーツ栄養学会(ISSN)は,抗酸化物質がスポーツパフォーマンスに与える影響についてのポジションステートメントを公開しました。

ここでは,「抗酸化効果においてトップクラスの栄養素としてランク付けされており,トレーニング適応を妨げることなく,回復またはパフォーマンスにおけるそれらの使用を支持する中程度から高品質のエビデンス(moderate- to high-quality evidence)がある」として,以下の抗酸化成分を挙げています:

サプリメント成分摂取量の目安摂取期間の目安
クレアチンモノハイドレート0.1 g/kg/日
n-3系脂肪酸(EPA+DHA)1000〜6000 mg/日6〜12週間
タルトチェリー粉末:480 mg/日;ジュース:60〜90 mL/日7〜14日間
アスタキサンチン4〜12 mg/日4〜12週間

この中で,馴染みがあるといいましょうか,摂取しやすいなと感じるのは,n-3系脂肪酸とアスタキサンチンだと思います。本記事では,n-3系脂肪酸とアスタキサンチンの効果と具体的な摂取方法について見ていきたいと思います。

n-3系脂肪酸

効果

EPAやDHAといったn-3系脂肪酸を摂取することで,ハードな筋力トレーニング後の筋損傷マーカー(CK:クレアチンキナーゼ,LDH:乳酸脱水素酵素など)や,炎症マーカー(IL-6,CRPなど)の上昇を抑える効果が報告されています。

出典対象者介入内容運動パフォーマンスへの影響身体の適応への影響
Barquilha et al.日常的に身体活動を行う男女EPA 260 mg/日 + DHA 202 mg/日を6週間記載なし筋力トレーニング後のCRP,IL-6,CK,LDHの減少,およびGSH/GSSG比(抗酸化状態の指標)の増加
VanDusseldorp et al.筋力トレーニングを積んだ男子大学生魚油 6000 mg/日(EPA 2400 mg/日 + DHA 1800 mg/日)を約7週間主観的な筋肉痛の改善伸張性運動後72時間における筋損傷,CK,LDHの軽減
Ghiasvand et al.記載なしEPA 2000 mg/日(ビタミンEと併用)を6週間記載なし抗炎症性サイトカインの産生増加,TNF-α放出の減弱,MDA(酸化ストレスマーカー)への影響
Lee et al.筋力トレーニングプログラムに参加した高齢者魚油(EPA 2100 mg/日 + DHA 720 mg/日)を12週間記載なしIL-6,CRP,TNF-αレベル(炎症マーカー)の低下

摂取方法

ISSNは,少なくともEPAやDHAを合計して1,000mg程度をサプリメント・もしくは食品として摂取することを推奨しています。ただし,上記に示した研究(VanDusseldorp et al.)では,EPA+DHAで4.2g(4,200mg)摂取した際に明確な効果が認められています。最大限の効果を狙うなら,この高用量が一つの目安になります。

ただし,この量になると,市販されているサプリメントの1日目安量では,摂取しづらいようです。たとえば,DHCの「DHA」ではDHA 510mg・EPA 110mg,ネイチャーメイドの「スーパー魚油(EPA/DHA)」はEPA 190mg・DHA 80mgです。目安量を多少超えても問題は起きづらそうですが,推奨はしづらいところです。

通常の食品ですと,下記のような食品から摂取すると良さそうです。すべて100kcal当たりで示しています:

  • さんま皮付き焼:重量36g,DHA 712mg,EPA 463mg,n-3系合計 1.8g
  • さばの缶詰水煮:重量57g,DHA 747mg,EPA 534mg,n-3系合計 1.6g

特に手軽なのはサバ缶でしょうか。たとえばAmazonでも購入できる「いなば食品 いなば ひと口さば水煮(2026/3/3閲覧)」は,1缶あたりDHAが1,060mg・EPA 660mg含まれています。高用量の4.2gには届きませんが,推奨量の下限である1,000mgは簡単にクリアできます。日常の食事にサバ缶を加えつつ,不足分をサプリで補うのが現実的でしょう。

アスタキサンチン

効果

サケやイクラに含まれる赤オレンジ色の色素成分で,強力な抗酸化・抗炎症作用を持っています。持久力向上や疲労回復に役立つデータがあります。

出典対象者介入内容運動パフォーマンスへの影響身体の適応への影響
Fleischmann et al.
Sawaki et al.
記載なし12 mg/日を30日間,または6 mg/日を4週間運動後の血中乳酸濃度の低下記載なし
Malmsten et al.救急救命士の学生4 mg/日を6ヶ月間(運動と併用)バーベルスクワットの反復回数が55%増加記載なし
Brown et al.トレーニングを積んだ男性サイクリスト12 mg/日を7日間脂質酸化が約69%増加,呼吸交換比が約3%低下記載なし
Baralic et al.
追跡研究
サッカー選手4 mg/日を90日間記載なし抗酸化酵素活性が約17〜42%増加。トレーニングに伴う高感度CRP(炎症マーカー)の上昇を抑制。
Djordjevic et al.エリートサッカー選手4 mg/日を90日間記載なし運動後の血中クレアチンキナーゼ(筋損傷マーカー)上昇を抑制(プラセボ群の約29%上昇に対し,介入群は約21%の上昇)
Barker et al.記載なし12 mg/日を4週間筋力トレーニングの成果には影響しないが,運動24時間後の筋肉痛(約57%減)と自覚的筋損傷(約60%減)を軽減記載なし
Gonzalez et al.消防士12 mg/日を4週間換気性無酸素性作業閾値が8.8%向上模擬消火活動に対する生理学的,酸化的,および炎症性バイオマーカーの反応が低下

具体的な摂取方法

ISSNの推奨量は「4~12mg/日を4~12週間」です。

これを食事から摂ろうとすると,サケ100g中のアスタキサンチンは約3mg程度とされている(Ref)ため,毎日サケを4~5切れ(300~400g)食べる計算になります。これは胃腸への負担も大きく非現実的です。そのため,アスタキサンチンはサプリメントの活用が基本になります。

サプリメントから摂取する場合,下記のような製品があります(一例です):

商品名成分含有量(1日あたり)内容量価格(1日あたり)
DHC9mg30日分1,382円(約46円)
アスタリール12mg30日分4,655円(約155円)

DHCの製品は1日1粒で9mgと推奨量を十分に満たし,コストパフォーマンスも良好です。一方のアスタリールは,前述の鏑木毅さんがアンバサダーを務める実績あるブランドです。予算や好みに合わせて選ぶとよいでしょう。

まとめ

本記事では,国際スポーツ栄養学会(ISSN)のポジションステートメントをもとに,抗酸化物質である「n-3系脂肪酸」と「アスタキサンチン」の効果と摂取方法を紹介しました。

管理栄養士の視点からも,また日々トレーニングを行うランナーとしての実践的な観点からも,効率的な疲労回復は重要なテーマです。特に,胃腸に負担をかけずカプセルで手軽に推奨量を摂取できるアスタキサンチンのサプリメントは,持久系アスリートにとって非常に取り入れやすいと感じました。私自身もさっそく試してみようと思います。

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