食の安全について理解するために『食品添加物はなぜ嫌われるのか』【書評】

みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。

食品添加物は嫌われているようです。たとえば,大手牛丼チェーンの1つである松屋のHPには下記の記述があります:

さらに松屋フーズでは、自然界の食品から作られたダシは身体に優しいとの観点から、化学調味料・人工甘味料・合成着色料・合成保存料を使用しないメニューの開発を推進しております。
これまでもこれからも、みんなの食卓であるために、さらなる美味しさと松屋フーズならではの安全・安心を求めてまいります。

引用)身体がよろこぶ自然味を|安全・安心な食事をあなたに|松屋フーズ

“自然界の食品から作られたダシは身体に優しい”とし,化学調味料・人工甘味料・合成着色料・合成保存料といった食品添加物を使用しないとのことです。つまり,化学調味料などの食品添加物が,あたかも身体に優しくないかのような書かれ方がなされています(食品添加物には自然(天然)由来のものもあるのですが,そんなことはどうでもよいことなのかもしれません)。

食品添加物は,長い期間にわたって存在している食品安全上のテーマの1つと言えるでしょう。畝山智香子 先生著『食品添加物はなぜ嫌われるのか』ではそれを主題の1つとしています。

本書を読むと,上記のような主張(食品添加物は身体に優しくない)に違った見方ができます。食品添加物は,安全性試験によって「適切な使用条件」のもとで「適切な量」を摂取した場合に安全性が確認されているものです。一般に食べられている食品(自然のもの含む)では,こんなことは明確でありません。そのためむしろ,食品添加物の方が安全であるという見方も可能なくらいです(やや強引ではありますが)。

食品はもともと何が含まれるのかわかっていない、「未知の化学物質のかたまり」です。食品添加物とは、そのような食品の中でも例外的に成分も、どう使えばいいのかもよくわかっている、安全な使い方を確認された「優等生」と言えます。食品の成分のすべてが、食品添加物として認められるための条件を満たすことはできないのです。安全性に関する基準をクリアして食品添加物になれないもの、なろうともしないものが食品として販売されているのが実情であるということを知ると、なぜ多くの人たちが食品添加物を悪者扱いし、食品添加物さえなければ食品は安全であるかのように言い、無添加が宣伝文句として通用するのでしょうか?

引用)畝山智香子:食品添加物はなぜ嫌われるのか, p.54より

本書では,食品添加物以外にも食の安全について広範な話題(超加工食品やオーガニック食品,プロバイオティクスなど)に触れています。副題に「食品情報を「正しく」読み解くリテラシー」ともあるように,本書のテーマは食品添加物のみにとどまりません。食品添加物が悪いとされる言説が広まった背景には,情報を読み解くリテラシーに問題があるのかもしれません。そう考えると,食品添加物もその他の話題も,根っこの部分は共通しているように思えます。

食の安全に関する問題は複雑です。偏った情報が多く存在することに加え,それらを適切に読み解くためには歴史的な背景や各国の食糧事情等にも通じる必要があります。容易なことではありませんが,そのサポートを本書は行ってくれます。食の安全に関する情報を正しく把握できるリテラシーを養いたいと考える方にオススメの書籍です。

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