ちょっと大変な「バター論」に首を突っ込んでみる|バターとマーガリンを考える②

栄養情報

みなさん,こんにちは.
シンノユウキ(y_stadio)です.

食べ物には良い面と悪い面とがあるといえます.そして,それらの峻別や見積もりは人によって大きく異なる場合があります.今回紹介するバターも同じです.

一般的にはバターは味・美味しさの面で優れていますが,エネルギー量が多く肥満の原因になるという認識がなされていると思います.

私の場合は少しだけ違います.おそらく,味・美味しさを少し過小に見積もり,健康に与える悪影響について過大に見積もっていると思います.味に関しては代替物であるマーガリンに置き換えても問題ないと考えていますし,健康に与える悪影響についてもエネルギー量だけでなく飽和脂肪酸についても考慮します.

今回はバターについて書きますが,一般の方よりもややバターを悪く言う方に傾いているきらいはあるかと思います.バター派の方すみません.この辺りは人によって変わる部分ですので,「マーガリンで代替するなど言語道断」というような方は少し違う視点でご覧になることをオススメします.最後にはそのような方に向けたアドバイスもさせていただきますので,ぜひご覧ください.

では行きましょう!

前回の記事はこちら

前回はバターと比べて悪者にされがちなマーガリンについて書きました.

内容としては「マーガリンそんな悪くないよ?」って感じでした.今回はそれの続きのような内容で,バターについて書きます.

バターの何が悪い?

バター悪い悪い言ってますが,はたしてバターの何が悪いのか.以下でこれについて触れたいと思います.

理由1:飽和脂肪酸

その1つ目は飽和脂肪酸と呼ばれる脂肪酸です.栄養学に特段の興味のない方は「飽和脂肪酸とは何ぞや?」というところまでの理解は不要かと思います.二重結合うんぬんを理解したところであんまり役には立たないですかね(もちろん純粋に楽しい).ただし,この脂肪酸がバターが悪いとされる理由の1つであることは認識しておいてください.栄養学に詳しい方への解説は不要ですかね.

バターの重量のおよそ半分は飽和脂肪酸です(参考).10gのバターだと約5gが飽和脂肪酸です.飽和脂肪酸が含まれる食品はたくさんありますが,その中でも含まれる割合でいったらかなりのものです.この飽和脂肪酸が悪さをすると考えられています.

ハーバード大学の研究者らが行った研究(参考)では,飽和脂肪酸から摂取するエネルギーを穀類由来の炭水化物から摂ったと仮定した場合,それがエネルギーの5%だと冠状動脈性疾患(心筋梗塞など)のリスクが約9%低下することを報告しています.そして,それが不飽和脂肪酸と呼ばれる種類の脂肪酸で置き換えた場合は17%も低下するとのことです.これは逆もしかりで,炭水化物で取るはずのエネルギーの5%を飽和脂肪酸で取ると,冠状動脈性疾患のリスクが約9%上がっちゃうということになります.

転載)Li, Yanping, et al. "Saturated fats compared with unsaturated fats and sources of carbohydrates in relation to risk of coronary heart disease: a prospective cohort study." Journal of the American College of Cardiology 66.14 (2015): 1538-1548.

さらに,日本人を対象にした研究(参考)では,飽和脂肪酸の摂取量によって段階的に5つのグループにわけ,それぞれのグループで心筋梗塞発症のリスクを比較しました.その結果,飽和脂肪酸が多い人ほど心筋梗塞のリスクが高くなる傾向が見られました.

転載)https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3273.html

これらの研究はバターそのものに焦点を当てているわけではなく,飽和脂肪酸の全てを対象としていますが,バターには飽和脂肪酸が多いのでそれを控えましょう,という流れになるのですね.

理由2:バターの関わる食生活や習慣

2つ目はバターの関わる食生活や習慣です.なんとなくの感覚ですが,バターをたくさん食べる人の食生活が健康そうな感じはしないなぁと思ってます.これに関する根拠を示すことは難しいのですが,そんな印象を持っています.

たとえば,食パンにバターをたっぷりと塗ってしまう人と,ただトーストしただけで食べる人.おそらく,食パンと一緒に食べる付け合せも,違うだろうなと想像します.トーストしただけの人だとサラダや果物,ヨーグルトなどを合わせるかもしれませんが,たっぷとバターを塗った人がそれをするとは私は考えにくいと思います.

また,これも私の勝手な見解ですが,健康に良いと考えられていないバターをたっぷりと含む食事をする人が,積極的に運動を心がけているとはなかなか思えません.

つまり,バターそのものよりもそれが関わる食生活や習慣の方に問題があると考えられるかもしれないのです.これに関して,まだ確固たる科学的な根拠はありませんが,ある程度の合意が栄養士などの中では得られるんじゃないかなぁ~と考えています.

「バターが悪いなんて嘘!」って聞いた事あるけど?

このような論調もたまに見かけますね.おそらく,その出処となっているのはこちらの論文です(参考).論文のタイトルは「Is Butter Back? A Systematic Review and Meta-Analysis of Butter Consumption and Risk of Cardiovascular Disease, Diabetes, and Total Mortality」.「バターは戻ってくる?」という面白いタイトルですね.

この論文ではバターと疾病との関係を検討した9つの研究の結果を統合し,改めて考察しています.その結果,バターを1日に14グラム程度摂取すると全原因による死亡率が1%上昇し,心血管疾患には関係なく,2型糖尿病に関してはリスクを4%程度下げた,という結果が導き出されました.

「1%でもリスクはリスクだよ」と言えなくもないですが,今までバターを悪者にしてきた感覚からすると,その逆に結論を持っていきたくもなります.つまり,「バターは悪者ではなく,食べても良いんだ!」ってしたくなります.

ただし,そのように考えるのは少し待ったほうが良いです.解釈が非常に難しいのですが,たとえばこの研究ではバターを他の油(マーガリンやオリーブオイルなど)に置き換えた際にどうなるか?のように比較したものではありません.バターの代りに,バターの使われているパンを食べたのかもしれませんし,脂肪分の多い牛肉を食べたかもしれない.

これらの研究で使用された調査は,たとえば「1週間にバターをスプーンに何杯食べましたか?」といった感じで質問され,それを使用しています.なので,パンやケーキなどに予め「隠れてしまっていたバター」は測定できていない可能性があります.この辺りは食事を対象とした研究の解釈を難しくさせる原因になっているとも言えるでしょう.

飽和脂肪酸の健康リスクについてはある程度は根拠が蓄積しています.その飽和脂肪酸の多いバターを他の油に置き換えるなどして控えることは,選択肢として十分に魅力的なものだと考えます.

バターの他に考えること

上記でバターのリスクについて述べてきましたが,飽和脂肪酸が含まれるのはバターだけでありません.どうも,伝え方によっては「バターだけ控えればいい」って方向に話を持っていく方がいらっしゃいますので,ここで少し書いておきます.

バターの重量の約半分が飽和脂肪酸であることはすでに述べました.これはかなりの割合ですが,そもそもバターは大量に食べる機会の少ないものです.料理に使う分だと10gとか20gとかそのくらいのものでしょう.だとすると,摂取される飽和脂肪酸は5gとか10g程度です.これでも十分に多いは多いですが,大量に食べるものではないので,摂取量は抑えられがちです.

しかし,たとえば牛カルビ(牛バラ肉).私が焼き肉に行ったら300gくらい余裕ですが(タン塩派ですけどね),100gあたり13g程度の飽和脂肪酸が含まれます(参考).300gだと39g程度バターの比ではないですね.改めて計算してみて恐ろしくなりました.牛脂を食べるダイエットのようなものを聞いたことありますが,言わずもがなってやつですね.

もちろん,毎日焼き肉する方は少ないでしょうが,バター“だけ”を悪者にして気にするのは誤りです.お含みおきくださいね.

NO BUTTER, NO LIFE な方へ

最後にバターなしで生きていけない方へのアドバイスのようなものです.たまに少量を食べる場合であれば,健康に大きな影響はないでしょう.しかし,それでは足りない!という方は以下を読んでみてください.

ここまで,バターを食べることによる悪影響をつらつらと書き,「バター悪くないよ!」とも解釈できる論文にも慎重な立場を示してきましたが,バター大好きで絶対に辞められないという方もいらっしゃいます.仕方ないです.当たり前のことです.食べ物に限らず何事でもあり得ることです.

私たちは何のために生きているのでしょうか.健康のため?そのような方はバターは止めておいたほうが無難です.でも多くの方はそうじゃないでしょう.「美味しいものを食べて程々に生きていきたい」.このような方は多いのではないでしょうか.良いですね.

そのような方の「美味しいもの」の中に「バター」ないしそれを使った料理があるのであれば,バターを食べましょう.ぜひ食べましょう.しかし,長生きして食べる回数を増やしたいのであれば,その他の健康要因を調整し(運動をする,タバコを控える,脂肪分の多い牛肉を控えるなど),トータルで帳尻をあわせるよう努力されることをオススメします.

一般に健康に良くないものを多めに食べたいのであれば他で努力しましょうね,ということです.ちなみに,,,私はバターをそこまで好きでないので,わざわざ食べません.色眼鏡.

まとめ

今回はバターについて書きました.いろいろな問題が散らばってて,思ったより考えをまとめることができました.バターをマーガリンに置き換えることについて,また書けたら書いてみようと思います.

この記事の著者
管理栄養士/修士(人間生活化学)

シンノユウキです。管理栄養士/修士(人間生活科学)/ 栄養系の出版社で勤務/ 会社員ブロガーです.科学的に正しくかつ妥当なことをお伝えしていきます.プログラミングが趣味なので関連記事も書いています.

シンノユウキをフォローする
栄養情報
シンノユウキをフォローする
みんな栄養に頼りすぎてる
タイトルとURLをコピーしました