マーガリンは悪者なのか|バターとマーガリンを考える①

みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。

発端は以下のツイート.

私はバターを極力控えるようにしています.その理由は以下の2つ:

  • マーガリンで代替可能
  • 健康に良くないというエビデンスが蓄積されすぎている

このようなツイートをしたところ,「マーガリンで代替可能」というところに引っかかる方がいらっしゃいました.世間的にはバターよりもマーガリンの方が悪者に見られがちのようなのです.なるほど,一般的にはこのような認識なのだなぁと,勉強になりました.

たしかに,マーガリンはバターの代替として作られた「人造バター」と言われることもあり,もっと悪くいうと「食べるプラスチック」と言われることもあるなど,なかなか悪者にされています.

このように悪者にされる理由としてはマーガリンに含まれる「トランス脂肪酸」の影響が大きいように思います.今回はマーガリンのトランス脂肪酸について触れてみます.

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トランス脂肪酸とは?

少しトランス脂肪酸について紹介します.農林水産省のHPに良い文言がありましたので,引用します:

  • 不飽和脂肪酸には、炭素間の二重結合のまわりの構造の違いにより、シス型トランス型の2種類があります。
  • シス(cisとは、“同じ側の、こちら側に”という意味で、脂肪酸の場合には水素原子(H)が炭素(C)の二重結合をはさんで同じ側についていることを表しています。トランス(transとは、“横切って、かなたに”という意味で、脂肪酸の場合では水素原子が炭素間の二重結合をはさんでそれぞれ反対側についていることを表しています。

引用)http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/

細かい違いですが,水素原子の位置によってトランス型脂肪酸かシス型脂肪酸かにわけられます.マーガリンのように工業的に作られる場合もあれば,ウシやヒツジなどの反すう動物由来の食品に含まれる場合もあります.

トランス脂肪酸の健康リスク

トランス脂肪酸の摂取量が増えると,血中LDL-HDLコレステロールの比が高くなることが報告されています(参照).

引用)Brouwer, Ingeborg A., Anne J. Wanders, and Martijn B. Katan. "Effect of animal and industrial trans fatty acids on HDL and LDL cholesterol levels in humans–a quantitative review." PloS one 5.3 (2010): e9434.

この研究では,食事中の脂肪酸をシス型のものからトランス型の脂肪酸に変化させた時の血中コレステロールに着目しています.

これをみると,エネルギーに占める食事中のトランス脂肪酸(Percent of energy from trans fatty acids)が増えるに従って血中のLDL-HDLコレステロールの比が増加しているように見えます.白丸の工業的に生成されたトランス脂肪酸に着目すると,トランス脂肪酸が1%増えるごとにLDL-HDLコレステロールの比が0.055増加するとのことです.

このことが良くないことであることは今更いう必要もないでしょう.健康診断でも言われますよね?

日本人とトランス脂肪酸

日本人のトランス脂肪酸の摂取量は多くない

ところで,先ほど提示した研究のデータを解釈するためには日本人がどの程度のトランス脂肪酸を摂取しているかが重要です.

食品安全委員会は,日本人のトランス脂肪酸の摂取量をエネルギーのうちの0.3%であると報告しています(参照).

また,30〜69歳の225人の成人の16日間の食事を分析した研究においても,女性は0.8%,男性は0.7%のエネルギーをトランス脂肪酸から摂取していました(参照).

さらに,29の国と地域におけるトランス脂肪酸の摂取量を比較した研究もあります(参照).以下の図は摂取量によってグラフ化したものですが,日本人の摂取量は相対的に低めとなっていることがわかります:

引用)Wanders, Anne, Peter Zock, and Ingeborg Brouwer. "Trans fat intake and its dietary sources in general populations worldwide: a systematic review." Nutrients 9.8 (2017): 840.

これらを勘案すると,日本人が健康リスクを考える際は,トランス脂肪酸よりも他について考えるべき,というふうになるかもしれません.

マーガリンのトランス脂肪酸

次に,マーガリンに含まれるトランス脂肪酸について見てみます.明治さんがわかりやすい表にまとめてくださっています:

参考)https://www.meiji.co.jp/dairies/transfat/

たとえば一番上の「明治 コーンソフト 300g」.これはトランス脂肪酸が10gあたりに0.1g含まれています.これをかなり多めに50g程度を1日に食べたとしましょう.0.5gのトランス脂肪酸を摂取することになります.これから生成されるエネルギーは4.5kcalとすると,1日に2000kcal摂取している人だと0.225%のトランス脂肪酸をマーガリンから摂取していることになります.

このことから,先の報告を考慮しても,日本人はマーガリンからのトランス脂肪酸摂取を極端に意識する必要はないと考えます.これは,各メーカ様の努力にも支えられています.

マーガリン50gを摂取しても,それ由来のトランス脂肪酸はエネルギー摂取量の0.3%にも足りないことからわかるように,マーガリンのみからトランス脂肪酸を摂取しているわけでもありません.マーガリンのトランス脂肪酸のみを極端に悪者にするのは明らかな誤りということになるでしょう.

もちろん,トランス脂肪酸の摂取量が少なくなるに越したことはありませんし,積極的にマーガリンを食べるべきとはならないことは補足しておきます.

まとめ

今回は誤解されがちなマーガリンのトランス脂肪酸について紹介しました.日本で一般に売られているマーガリンはトランス脂肪酸も少なく,これによる健康リスクの悪化を心配する必要はほぼないと考えて良いでしょう.

次回は,マーガリンよりも悪?なバターについて紹介したいと思います.次の記事はこちら!

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