【自己判断の前に】グルテン不耐症でない人がグルテンフリーを行うデメリット

みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。

グルテンフリー,流行ってますよね!(そうでもない?)

グルテンフリーは,一部の病気の人では非常に効果のある治療法です。具体的にはセリアック病。グルテンが原因の自己免疫疾患で,グルテンの摂取によって小腸に炎症や絨毛萎縮が生じます。それに起因し,吸収不良・下痢等がおこります。

セリアック病に,小麦アレルギー,非セリアック・グルテン過敏症を加えた3つの疾患をグルテン不耐症gluten intolerance)とよぶことがあります【1】Balakireva, Anastasia V., and Andrey A. Zamyatnin. "Properties of gluten intolerance: gluten structure, evolution, pathogenicity and detoxification capabilities." Nutrients 8.10 (2016): 644.:。これらの疾患では,グルテンフリーによって健康上のメリットを得られます(セリアック病以外ではグルテンフリーだけでは不十分な場合もあります)。

しかしそうでない人がグルテンフリーにする場合,非常に大きなデメリットがあります。今回はグルテン不耐症と診断されていない人がグルテンフリーを行うデメリットについて紹介していきます。特に,ダイエット(痩身)目的でカジュアルにグルテンフリーを試してみたいなと考えている方に読んでいただきたい記事です。

本記事では「グルテンフリー」という言葉を,①グルテンの含まれない食事や食品,②食事からグルテンを除去することの二通りの意味で使用します。

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グルテン不耐症と診断されていない人がグルテンフリーを行うデメリット

グルテン不耐症と診断されていない人がグルテンフリーを行う場合,主に下記3つのデメリットがあります:

  1. グルテン不耐症の診断が遅れる
  2. 栄養素の不足が起きやすい
  3. グルテンフリーをやめられなくなる

では順番に紹介していきましょう。

デメリット①:グルテン不耐症の発見が遅れる

自己判断でグルテンフリーを行った場合,本当にグルテン不耐症だった場合に発見が遅れる可能性があります。

自己流のグルテンフリーで(不幸にも)自覚できる症状が消失した場合,本来必要な診断を受けなくなるかもしれません。その結果,“厳格な”グルテンフリー実施の機会や,グルテンフリー以外に必要な対応ができなくなる可能性があります。

たとえばセリアック病では,治療として“厳格な”グルテンフリーが必要です【2】Itzlinger, Alice, et al. "Gluten-Free Diet in Celiac Disease—Forever and for All?." Nutrients 10.11 (2018): 1796.。避けるべき食品の詳細なリストと栄養士のサポート。これらのもと,グルテンフリーの遵守が求められます。“軽いグルテンフリー”では不十分なのです。診断されていないセリアック病患者では,厳格なグルテンフリーを行う動機もなく,必要なサポートも得られません。そのため,厳格なグルテンフリーが行われなくなる可能性があります。

栄養素の吸収不良によるビタミン・ミネラルの欠乏が起こりやすくなるのもセリアック病の特徴です。そのためグルテンフリー以外にも,栄養素のサプリメントによる対応も必要となります。それ以外にも,セリアック病患者でリスクの上がる病気もあります。未診断の場合,これらへの対応が行えていない可能性があります。

デメリット②:栄養素の不足が起きやすい

グルテンフリーを行う場合,栄養素の過不足が起きやすくなる可能性があります。

市販されているグルテンフリーの製品(穀物加工品)では,そうでない製品と比べてたんぱく質の含有量が少ない傾向が報告されています【3】Missbach, Benjamin, et al. "Gluten-free food database: the nutritional quality and cost of packaged gluten-free foods." PeerJ 3 (2015): e1337.。そもそもグルテンはたんぱく質です。それを避けようとすると,たんぱく質量が少なくなりがちなのは避けられないことかもしれません。

また,グルテンフリーを行っているセリアック病患者では,たんぱく質やビタミンの摂取量が不十分なことも確認されています【4】Melini, Valentina, and Francesca Melini. "Gluten-free diet: Gaps and needs for a healthier diet." Nutrients 11.1 (2019): 170.。グルテンフリーでは,食べられる食品がかなり制限されます。それが栄養素摂取の不足につながっているのかもしれません。

デメリット③:グルテンフリーをやめられなくなる

グルテンフリーにすることで,グルテンフリーをやめられなくなります。

ノセボ効果という言葉があります。プラセボ効果の逆です。簡単にいうと偽薬でも悪い効果が出ることをさします。本来はグルテンの摂取で症状がでないにも関わらず,「グルテンが悪い」といった感情を持つことによって,何らかの症状が発生するようになる可能性があります。

実際,非セリアック・グルテン過敏症(NCGS)患者等を対象にした研究レビューでは,グルテン摂取によるノセボ効果が40%の患者で確認されたことを報告しています【5】Molina-Infante, Javier, and Antonio Carroccio. "Suspected nonceliac gluten sensitivity confirmed in few patients after gluten challenge in double-blind, placebo-controlled trials." Clinical Gastroenterology and Hepatology 15.3 (2017): 339-348.

カジュアルにでもグルテンフリーにする。これによって,グルテンへの負の感情が蓄積してしまい,ノセボ効果が生じる(実際に症状が現れる)ようになってしまう可能性もあります。最終的には,非常に費用がかさむグルテンフリーをやめられなくなる危険があります。

まとめ:グルテンフリーを試す前に検査を

以上,自己判断でグルテンフリーを行うデメリットについて紹介しました。

グルテンフリーは,セリアック病などの特定の疾患では必要な治療法です。しかし,それらの疾患と診断されていない状態でグルテンフリーを行うことには,大きなデメリットがあります。

もし,グルテンフリーを試したくなるほどの症状があるのなら,まずしかるべき検査を受けたいところです(もちろん,他の病気の可能性もありますし)。日本ではセリアック病が希とされており【6】Fukunaga, Mai, et al. "Celiac disease in non-clinical populations of Japan." Journal of gastroenterology 53.2 (2018): 208-214.,診断可能な病院は多くないかもしれません。また非セリアック・グルテン過敏症も診断基準の公表こそされていますが【7】Catassi, Carlo, et al. "Diagnosis of non-celiac gluten sensitivity (NCGS): the Salerno experts’ criteria." Nutrients 7.6 (2015): 4966-4977.,セリアック病よりも新しい病気(概念)のため,診断はより困難な可能性もあります。

それでも,自己判断でグルテンフリーを行うことは肯定できません。本記事は,特にカジュアルにグルテンフリー試したいなぁと思っている方に届けばと考えています。

参考文献

参考文献
1 Balakireva, Anastasia V., and Andrey A. Zamyatnin. "Properties of gluten intolerance: gluten structure, evolution, pathogenicity and detoxification capabilities." Nutrients 8.10 (2016): 644.
2 Itzlinger, Alice, et al. "Gluten-Free Diet in Celiac Disease—Forever and for All?." Nutrients 10.11 (2018): 1796.
3 Missbach, Benjamin, et al. "Gluten-free food database: the nutritional quality and cost of packaged gluten-free foods." PeerJ 3 (2015): e1337.
4 Melini, Valentina, and Francesca Melini. "Gluten-free diet: Gaps and needs for a healthier diet." Nutrients 11.1 (2019): 170.
5 Molina-Infante, Javier, and Antonio Carroccio. "Suspected nonceliac gluten sensitivity confirmed in few patients after gluten challenge in double-blind, placebo-controlled trials." Clinical Gastroenterology and Hepatology 15.3 (2017): 339-348.
6 Fukunaga, Mai, et al. "Celiac disease in non-clinical populations of Japan." Journal of gastroenterology 53.2 (2018): 208-214.
7 Catassi, Carlo, et al. "Diagnosis of non-celiac gluten sensitivity (NCGS): the Salerno experts’ criteria." Nutrients 7.6 (2015): 4966-4977.
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