みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。
「コラーゲンを経口摂取しても効果がない」ということは,一般的な認識になっているのではないかと思います。しかし最近の研究を見てみると,どうもそうとは言い切れない様子でもあります。今回は「コラーゲンを経口摂取しても効果がない」と断言してしまいがちな方へ向けて,コラーゲンについて書きたいと思います。
コラーゲンは私たちの皮膚を構成しているたんぱく質の一種です。そのため普通に考えると,コラーゲンを摂取→皮膚を作る材料として使われる→美肌になるように思えます。何となく納得できることですよね。筋肉を増やそうとするとお肉を食べる。感覚的にはこれと同じようなことだと思います。
しかし,一般的には次のような論調でもって上記は否定されます:まず,コラーゲンはたんぱく質の一種ですので,他のたんぱく質と同様に消化された後に吸収されます。この際にかなり細かい形(アミノ酸や,アミノ酸がいくつか結合したジペプチド)にまで分解されてしまうため,他のたんぱく質と何ら変わらない,摂取したとしても特段の美肌効果は得られない,というのが一般的な「コラーゲンを経口摂取しても効果がない」の論調だと思います。
とはいえ,これだけのことを根拠にコラーゲンの効果を論じるのは少し乱暴です。上記の根拠は,一般的な消化・吸収の話をコラーゲンに当てはめただけの,限定されたメカニズムレベルの話です。これだけを根拠として論じることが許されるのであれば,食物アレルギーなんて世の中からなくなってしまいます(食物アレルギーの原因となるアレルゲンの多くはたんぱく質です。消化によって低アレルゲン化する場合もありますが,すべてではありません)。つまり効果がないことを説明するためには,メカニズムレベルの話だけでなく,実際に人間に対してなされた研究を参照し,検討する必要があります。
というわけで,論文検索サイト:PubMedにてコラーゲンの文献を検索してみます。collagen skin (intake OR adsorption OR supplementation)
で検索しHumans
でフィルタリングしてみました。2020/03/28現在,168件の研究が見つかりました。このうち,コラーゲンの経口摂取と皮膚との関連を見ていそうなものを取り出してみました。基本的にはタイトルをパット見て,それっぽく見えるものはAbstractを読みました。結果,12件の研究が取り出せました。
このすべての研究について全文を読んでエビデンステーブルにまとめて…なんてことはしませんが,特に目についたものについて紹介すると下記のようになります:
2015年にJournal of cosmetic dermatologyに投稿された論文では,日本人とフランス人 40~65歳の女性を対象にした2つの臨床試験が含まれており,コラーゲンペプチドを毎日摂取することで皮膚の水分量,コラーゲン密度が改善することが確認されています。
2018年にNutrientsに投稿された論文では,低分子コラーゲン+ビタミンCを摂取することで,ビタミンCだけを摂取するよりも皮膚の水分量が有意に改善したことを報告しています。
他の研究に関しても,結果だけを見ると概ね良い結果が得られていました。ポジティブな結果を示すものがほとんどです。初めて検索したときは,この結果に驚きました。コラーゲンは効果ないという頭で検索していると,かなり意外な結果ですよね。このメカニズムには不明な点も多いのですが,口から摂取したコラーゲンが皮膚にも届いていることが確認されており,メカニズム的な背景についても蓄積されているところです。
とはいえ,これらの結果をそのまま鵜呑みにし,美肌を目指す人にコラーゲンの摂取を勧めることは難しいかもしれません。その段階に到達するには,まだ研究が少なすぎる印象です。また,今回研究の対象になったのはコラーゲンを吸収しやすい形にした低分子コラーゲンペプチドでの話です。一般的な食べ物に含まれるコラーゲンを対象にしたものではないので注意です(おそらく効果はない)。
しかしやはり,「コラーゲンを摂取しても肌に影響はない」とするのは誤っていそうです。栄養士的には,たんぱく質の消化・吸収の経路だけを追ってコラーゲン効果ないというのは非常に簡単ですが,それは思考が停止しています。加えて,そのレベルの話だけを根拠にしていると他の疑似科学・ニセ科学と同じ手法を採用していることになりかねません。常に考えアップデートを行っていきたいものです。
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