【解説】給与栄養目標量|エネルギー・栄養素別の計算方法【Excelファイル付き】

みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。

給与栄養目標量を設定することは,献立計画の立案での重要なプロセスです。

今回は,給与栄養目標量の算出方法(エネルギー・栄養素別)を紹介します。

注意:今回紹介している給与栄養目標量は,主に健康な成人から構成される集団を対象とした事業所給食等を想定したものです。学校や病院での給食を対象にしたものではありません。基本的な流れは同様ですが,特別な配慮が必要な場合もあります。また施設ごとに定められた手順等が存在する場合は,そちらを参照してください。

給与栄養目標量の算出にExcelシートを利用しています。サンプルのExcelファイルは下記よりダウンロードできます。数式等も入力されていますので,必要に応じて活用することができます。ぜひダウンロードしてみてください。

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給与栄養目標量とは?

個人もしくは集団に対して食事を提供する際の,給与する栄養素量の目標を給与栄養素目標量といいます。これを目安・目標として献立を作成していきます。献立作成の際に非常に重要になる値です。

個人ではそれぞれの特性(年齢,性別,身体活動レベルなど)から,「日本人の食事摂取基準」などを参考に作成します。比較的簡単に決めることができますが,集団の場合は少し方法が変わってきます。

以下では,集団の給与栄養目標量を設定する方法について紹介していきます。

給与栄養目標量の算出方法|エネルギー

給与栄養目標量の算出方法(エネルギー)について解説します。下記の順に行っていきます:

  • ステップ①
    個々人のエネルギー必要量を算出する

    基礎代謝基準値と身体活動レベル等を利用し,対象となる集団の個人ごとにエネルギー必要量を算出します。

  • ステップ②
    エネルギー必要量の分布を確認する

    ステップ①で算出した個々人のエネルギー必要量の分布を確認します。

  • ステップ③
    給与栄養目標量の決定

    ステップ②の推定エネルギー必要量の分布をもとに,給与栄養目標量を決定します。

①個々人のエネルギー必要量を算出する

まず,個人ごとにエネルギー必要量を算出します。
エネルギー必要量を算出する方法は様々ありますが,実現可能性を考慮しつつ方法を検討しましょう。

ここでは,基礎代謝基準値と身体活動レベルを利用した方法について紹介します。この場合,下記の情報について収集する必要があります:

  • 性別
  • 年齢
  • 体重
  • 身体活動レベル(PAL)

性別・年齢から基礎代謝基準値(食事摂取基準を参照)を選択し,基礎代謝基準値と体重を利用して基礎代謝量を算出します。そして,基礎代謝量とPALを利用し,推定エネルギー必要量を算出します。式では下記のようになります:

基礎代謝量(kcal) = 基礎代謝基準値 × 体重(kg)
推定エネルギー必要量(kcal) = 基礎代謝量(kcal) ×PAL
基礎代謝基準値:性別・年齢から選択

この作業を集団を構成する全ての個人に行います。
Excelシートに,下記のように入力していくと良いでしょう:

②エネルギー必要量の分布を確認する

集団全員の推定エネルギー必要量を算出できたら,次は集団での分布を確認します。

下記のような度数分布表を作成し,ヒストグラム等を描くとわかりやすいでしょう。
その際,平均値や中央値を算出しておくとわかりやすくなります:

このデータでは,平均値が2147.8,中央値が2146.7となっています。
ヒストグラムを見ても1800~2600kcalの間に多くの人が収まっていることがわかります。

③給与栄養目標量の決定

上記で確認した推定エネルギー必要量の分布をもとに給与栄養目標量を決定します。

一般的にエネルギーの給与栄養目標量は,個々人の必要量の±200kcal程度の範囲に収まることが望ましいとされます。これを踏まえ,1種類の給与栄養目標量とするか複数種類とするかを検討します。

今回のデータでは,平均値付近である2150kcalを給与栄養目標量としても54%程度の人しか±200kcalの範囲に入りませんでした。

一方,2000kcalと2400kcalの2つとした場合は81%の人が範囲に入りました。これらを考慮すると,今回の場合は2000kcalと2400kcalの2種類とすることが望ましそうです。

ただし,複数の給与栄養素目標量を設定するのが難しい場合で1種類のみを設定する場合は,最も多くの人が含まれる2150kcalを設定するのが良さそうです。

筆者
筆者

給与栄養目標量として,どれを選択するかは施設等における実現可能性を考慮して決定します。そのため,全施設共通の「正解」は存在しません!

給与栄養目標量の算出方法|栄養素

給与栄養目標量の算出方法(栄養素)について解説します。下記の順に行っていきます:

  • ステップ①
    個々人の必要な必要量を把握する

    給与栄養目標量を把握したい栄養素について,個々人で必要な栄養素量を把握します。

  • ステップ②
    必要量の分布を確認する

    ステップ①で算出した個々人の栄養素必要量の分布を確認します。

  • ステップ③
    給与栄養目標量の決定

    ステップ②の栄養素必要量の分布をもとに,給与栄養目標量を決定します。

①個々人の必要な必要量を把握する

エネルギーと同様に,個々人について必要な栄養素量を把握しましょう。

把握する栄養素についてもできるだけ多い方が良いでしょうが,これも実現可能性を検討しつつ判断します。ただし,最低限として,たんぱく質・脂質・炭水化物・食物繊維・ビタミンA・ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンC・カルシウム・鉄・食塩相当量あたりは把握したいところです。

個人ごとに,目標量や推奨量を算出しておきます。
下記のような食事摂取基準に準拠したデータ表があると便利です。

上記のような表をもとに,対象者ごとに目標とする給与栄養素量を算出しましょう:

②必要量の分布を確認する

エネルギーと同様に必要量の分布を確認しましょう。

下記のように,平均値や最低値・最大値等を算出するとわかりやすいです:

③給与栄養目標量の決定

推定エネルギー必要量については上記で説明しました。
他の栄養素については,基本的には下記を満たすことを目標とすべきだと思います:

  • 目標量の範囲内に収める
  • 推奨量を下回る人を極力少なくする

これを踏まえ,下記のように給与栄養目標量を設定してみました:

この中では,たとえば鉄については必要量の個人差が多くなっているため,給与栄養目標量を11.0gにすると半分以上の人(男性や月経のない人)で必要量以上に摂取することとなります。そのため,鉄分の多い・少ないで二通りを用意する選択肢もありえるでしょうし,コストと見合わないと判断する場合は給与栄養目標量を少し下げることを検討しても良いかもしれません。

筆者
筆者

いずれにせよ,ここで示したのはあくまでも例なので施設等の実情に併せて設定する必要があります。

まとめ

今回は給与栄養素目標量を設定する方法について紹介しました。

実際に算出に利用したExcelファイルは下記よりDLできますので,参考にしてください:

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