みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。
今回から3回に分けて,
- 疫学
- 統計学
- 栄養疫学
に関するオススメ書籍を紹介していきたいと思います.
前回は疫学のオススメ書籍について紹介しました:
管理栄養士である私が,独学の際に使用した書籍などをメインに紹介できればと思います.なので,管理栄養士の専門分野の1つである栄養疫学以外は,専門家とはとても呼べない一般人ですので,その点には留意いただければと思います.
では行きましょう!
一般教養としての統計学
ここで紹介するのは一般教養レベルの書籍です.決して内容がそれ以上のレベルのものと比べて劣っているというわけではなく,読者層の違いとして見ていただければと思います.
統計学が最強の学問である
統計学(疫学含む)についての重要性を認識させてくれる書籍です.統計学を自らの専門に応用せんとする人でなくても役に立ちます.タイトルなどからして,アカデミックの文脈からは離れた書籍のようにも思えますが,統計学や疫学についての歴史,またそれぞれの専門分野における活用の形などにも触れられており,有用だと思います.ベストセラーに名を連ねた書籍のため,読んだことある方も多かろうと思いますが,未読の方はぜひ手に取られることをオススメします.
統計学を拓いた異才たち
統計学の歴史についてです.統計学には,ピアソンの積率相関係数や,フィッシャーの直接確率検定など,人の名のついた方法が多いですよね.それらの登場人物の周りから,統計学の歴史について踏み込んでいきます.「これを読んでも学部レベルに必要な知識の全ては身につかない」ので一般書の括りにしていますが,専門用語も多く登場するので,全くの入門者が本書を楽しみ切るのは,少し難しいかもしれません.骨の髄まで楽しみたい方は,統計学に関する他の入門書を読んだ後に挑戦されることをオススメします.
統計でウソをつく法
統計学というと,データを集め,それを分析する際に着目されがちですが,実はその前段階や,分析後の見せ方などによっても,結果の与える影響は変わってきます.これらを意図的に操作することで,タイトルどおり「統計でウソをつく」ことが可能になります.本書を読むことで,実際に役に立つ統計手法を身につけることはできません.しかし,世の統計データを読み取る際に,確実に役に立つようになるでしょう.いわば統計リテラシーを身につける.そのためにうってつけの書籍だと感じています.
学部レベルの統計学入門
次は学部レベルの統計学入門です.栄養学を専攻する学生が学部レベルで扱う範囲と考えていただいて差し支えありません.
管理栄養士・栄養士のための統計処理入門
栄養士・管理栄養士を目指す学生が習得する統計学に関する知識は,この書籍に含まれる内容程度で問題ないでしょう.多くの統計手法が数式でもきちんと解説されています.また,特筆すべきは,統計手法の選択に関するフローチャートがついている点です.学生が卒論などで統計解析する際に,正しい手法を選択できるよう,データの種類や目的に応じた手法選択のためのフローチャートがついています.栄養士・管理栄養士を目指す学生さんには取り急ぎ持っておいていただきたい書籍です.
統計学入門 (基礎統計学Ⅰ)
統計学の入門書としては,かなり有名な部類に入るかと思います.かなり以前より刊行されている,数々の学生を統計学の世界に導いた実力派の名著だと思います.内容的には,統計学を専門の1つとはしないであろう学生には,少し難しいかもしれません.また,おそらく講義で講師の指導のもとに読まれることを前提としているようで,独学者にはあまり優しくないと感じます.であっても,手元に1冊置いておきたい書籍であることは間違いないでしょう.
完全独習 統計学入門
先に紹介した書籍が講師の指導のもと使われることを想定しているのに対して,こちらの書籍は独学(独習)向けの書籍となっています.非常に平易に書かれており,全くの初学者が入門するのにはうってつけの書籍だと思います.この書籍を読み,ある程度の統計学の知識を身につけられると,他に紹介している書籍も非常に読みやすくなることでしょう.「これから統計学を勉強してみたい」という方はぜひ手にとって見てください.
大学院レベルの統計学
今度は大学院レベルです.こちらは,統計学を専門の1つとしない分野の大学院も含まれます.ここでは,統計学を道具として扱うことも必要となります.
統計クイックリファレンス
なぜこんな書籍を見つけてしまったのだろう(失礼).最初に手に取ったのは,確か大学の図書館だったと思います.エンジニア向けの書籍を多く出しているオライリーの書籍の中ではひときわ異彩を放っていました.『統計クイックリファレンス』という書名ではありますが,各種統計手法について詳細かつ丁寧に解説されており,「統計学完全入門」的な書名でも全く通用すると思います.索引含め600ページの大部の書籍ではありますが,隅々まで読むのではなく,辞書的に活用しても良いかと思います.
メタ・アナリシス入門
大学院レベルになると,メタアナリシスを読み解く機会も増えるでしょう.それを正しく行うためには,当然ながらそれを正しく理解することが必須です.この書籍ではそれに必要な知識が細かく解説されています.また,実際にメタアナリシスを行うための方法も紹介されています.理解するためには,それを行ってみるのが一番.手っ取り早くメタアナリシスを理解したい方は手にとって見ると良いでしょう.
サンプルサイズの決め方
「この研究を行うためにどのくらいのサンプルサイズが必要ですか?」と聞かれて,「多ければ多いほどいいんじゃない?」としか答えられないような方は読むべきでしょう.サンプルサイズについて解説した書籍は多くありません.この書籍はその多くない書籍の中の貴重な一冊です.一見難解に見えますが,解説は丁寧ですので,腰を据えて読み進められることをオススメします.なお,サンプルサイズは「データの個数」のことを指しますが,サンプル数は「サンプリングした回数」のことを指します.全く別の言葉ですので誤解なきよう.
医学的研究のための多変量解析
多変量解析を用いらずとも,明確にデータを説明できれば良いのですが,どうしても用いる必要がある場合,こちらの書籍を参照されると良いでしょう.医学研究に必要な多変量解析について,多くの種類が解説されています.ここに載っている種類だけでも把握していれば,多くの場合は問題ないでしょう.全てを読み解く必要はないでしょうが,必要なときに参照できる場所において置かれることをオススメします.
まとめ
疫学,統計学,栄養疫学のオススメ書籍を紹介する連載.2回目の今回は統計学についてでした.統計学といっても,管理栄養士に向けたものが多く,それ以外には適用できないかもしれませんが,参考になる書籍が一冊でもあればと思います.
次回は連載の最終回.栄養疫学について取り上げます.
連載目次
- 【管理栄養士が選ぶ】疫学のオススメ本8選【一般教養~大学院レベルまで】
- 【管理栄養士が選ぶ】統計学のオススメ本10選【一般教養~大学院レベルまで】現在のページ
- 【管理栄養士が選ぶ】栄養疫学のオススメ書籍10選【一般教養~大学院レベルまで】